相続分は法律によって決まってはいますが、あくまでも割合だけです。現金などであれば簡単に分けられますが、割合だけ決められても、分けるのが難しい財産も少なくありません。
例えば、家を40代の兄弟2人で相続する場合、2人の共有になったのでは、使いにくくて仕方ありませんよね?
また、特定の子どもに老後の面倒を見てもらった場合、その子に多めに相続させてやりたいというのも人情だと思います。
また、会社経営者の財産として重要なのが、自分が経営する会社の株式です。
経営に全く関わっていない子どもが、経営している子どもと同じだけ株式を相続したら、変に対立して会社がうまくいかなくなる可能性もあります。
今は、揉める兆候などないかもしれません。
しかし人は、目の前に手に入るかもしれない財産があったら欲が出てくることもあります。
最初から、紛争の種はなくしておくほうが賢明です。
相続争いは、もともとは仲のよかったはずの親族関係を破壊するきっかけになることもあります。
そのためにも、遺言を残しておくべきです。
遺言の種類
遺言には、大きく分けて、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります(そのほかにも、危篤状態などを想定した特別な方式があります。使う機会は少ないこともありますし、そういう場合はホームページを見ている場合ではありませんので、ここでは説明を省略させていただきます)。
自筆証書遺言は、全文を自筆で書く遺言です(かつては、完全に全文手書しないといけなかったのですが、2019年1月から財産目録については自筆でなくても良くなりました。
財産目録は、財産を特定するために色々な情報を盛り込まないといけませんし(例えば、預金通帳なら支店名や口座番号など。不動産なら所在や地番、地目、地積などの内容など)、財産の数が多い場合、書き間違いをせずに財産の一覧表を作成するのはかなり大変ですから、合理的な改正だと思います。
なお、財産目録の全ページに署名押印が必要になります。
公正証書遺言は、公証人役場で公証人に遺言の内容を伝えて遺言書を作成してもらいます。
体調が悪い場合などに、公証人に出張してもらうこともできます。
秘密証書遺言は、自筆で書いた遺言を封筒に入れて封印し、公証人により封印を確認してもらう遺言です。
3つの方式のどの方式で作成しても、効力に優劣はありません。
優先順位は、作成時期によります。
相矛盾する遺言がある場合、新しいものが優先です。
このため、遺言に日付の記載は必須で、なければ無効になります。
自筆証書遺言は、自分1人で作れるので、手軽です。
一方、公正証書遺言は、専門家に依頼するわけですから、費用も手間もかかるのは確かです。
しかし、遺言は、あなたの死後になってはじめて役に立つものです。
もし無効になってしまっても、書き直しはできません。
そして、遺言は、法律で形式が細かく決まっており、素人が適当に作ってしまうと、無効になってしまう危険性も十分あります。
したがって、作成に専門家である公証人が直接関与する公正証書遺言をお勧めします。
自筆証書の保管制度について
自筆証書遺言は、自分で欠かなければいけないだけでなく、保管も自分の責任でしないといけません。
このため、どこに行ったか分からないという事態に陥る可能性があります。
そこで、自筆証書遺言を法務局で預かる制度が出来ました。
しかし、制度整備のため、他の相続法改正よりも施行が遅く、2020年7月からとなっています。
保管申請を受けた際、保管所の事務官は外形的な不備がないか確認することになります。
例えば、財産目録以外が活字だったとか、日付が書いていないといった場合には、指摘してくれるでしょう。
しかし、印鑑が偽物だったとか筆跡が違っていた、あるいは重度の認知症で何も分からなかったことなどを理由に遺言が無効になる可能性は残ります。
これらの危険性を考えると、多少費用がかかっても公正証書遺言にしておいたほうがいいように思います。
現段階では、制度運用は不透明で予測できない部分があります。
遺言は、失敗すると取り返しのつかないものですから、少なくとも現段階では、確実な方法を採っておく方がよいと思います。
当事務所でできること
1 遺言の吟味
自筆証書遺言は自分で書くし、公正証書遺言は公証人に作成してもらいます。
それなら、弁護士に相談することがあるのかどうか、疑問に思われるかもしれません。
しかし、内容を吟味する上では、弁護士の協力は有用です。
例えば遺留分の考慮が不十分だったりすると、自分の意図したとおりの相続が行われない可能性もあります。
相続法改正で配偶者居住権などの制度も導入されましたので、昔の遺言に比べてテクニカルな対応が出来る場合もあります。
もっといえば、民事信託という制度を使って相続に代わる対応をする、という方法も、最近は出てきています。
自分では発想できないこともあるかもしれません。弁護士に相談した上で遺言の内容を確定したほうがいいでしょう。
2 遺言執行
もう1つは、遺言を確実に実行するための準備をしておくことです。
遺言が効力を持つころにはあなたはこの世にいません。遺言どおりに財産を分けるためには、遺言執行者を選任しておくのが便利です。
そして、遺言執行の内容が複雑な場合や紛争が生じる恐れがある場合、弁護士を遺言執行者にするのが最も安心です。
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